文具のヒットメーカーに学ぶ。
愛され続ける製品を生み出すアイデア
『ディークリップス』や『XSシリーズ』など、「ミドリ」で長年愛されるヒット文具の産みの親、中村真介。数々の人気製品を世に送り出し続ける彼のアイデアはどのように生まれるのでしょうか?その秘密に迫りました。
文房具が好きな人なら、『ディークリップス』を一度は目にしたことがあるのではないでしょうか?
文房具が好きな人なら、『ディークリップス』を一度は目にしたことがあるのではないでしょうか?
書類につけたまま使い捨ててしまいがちなゼムクリップがかわいらしい形になることで、繰り返し使いたくなったり、コミュニケーションのきっかけにもなったりします。中村が担当し開発した『ディークリップス』は、2008年の発売以来、630万個以上の累計出荷数を誇る「ミドリ」ブランドの大ヒットアイテムです。当時、リユースとコミュニケーションをコンセプトに開発された『ディークリップス』はロングライフな製品の先駆けでした。
書類につけたまま使い捨ててしまいがちなゼムクリップがかわいらしい形になることで、繰り返し使いたくなったり、コミュニケーションのきっかけにもなったりします。中村が担当し開発した『ディークリップス』は、2008年の発売以来、630万個以上の累計出荷数を誇る「ミドリ」ブランドの大ヒットアイテムです。当時、リユースとコミュニケーションをコンセプトに開発された『ディークリップス』はロングライフな製品の先駆けでした。
「新しいもの」「定番」を模索し、開発し続ける
━━━入社からの経歴を教えてください。
僕は1981年に入社して、2年ほど営業を経験したのち、本社で生産管理の担当になりました。当時、キャラクター製品がヒットしては翌年には衰退…という時期だったため、「新しいもの」「定番」を模索し開発をし続けてきました。
初めて自分が企画して作ったのが『バグボーイ』、そのあとに『ピグニック』シリーズです。面白い路線というか…。キャラクター的要素もある、立体モノですね。
━━━入社からの経歴を教えてください。
僕は1981年に入社して、2年ほど営業を経験したのち、本社で生産管理の担当になりました。当時、キャラクター製品がヒットしては翌年には衰退…という時期だったため、「新しいもの」「定番」を模索し開発をし続けてきました。
初めて自分が企画して作ったのが『バグボーイ』、そのあとに『ピグニック』シリーズです。面白い路線というか…。キャラクター的要素もある、立体モノですね。
2000年頃から、日本と中国の製造コスト差が大きくなったことが起因して、プラスチックや革製品などは中国で生産するものがかなり増えました。紙製品は今日まで変わらず、ほとんどを自社工場など国内で生産しているんだけど…型モノと呼ばれるプラスチック成型品類は、当社においても中国での開発が進み、僕が担当することが多くなったわけです。
━━━時代の流れもあって、成型品プロデューサーと呼ばれるようになったんですね。
2000年頃から、日本と中国の製造コスト差が大きくなったことが起因して、プラスチックや革製品などは中国で生産するものがかなり増えました。紙製品は今日まで変わらず、ほとんどを自社工場など国内で生産しているんだけど…型モノと呼ばれるプラスチック成型品類は、当社においても中国での開発が進み、僕が担当することが多くなったわけです。
━━━時代の流れもあって、成型品プロデューサーと呼ばれるようになったんですね。
ヒット製品『ディークリップス』はこうして生まれた!
当時の中国では、金型や成型・細かい作業を得意とする工場が多かったので、塗装の細かいクリップやマグネットを発売しました。同時に、デザインフィルでは長く愛される定番品の開発を目指していて…。その成功例が『ディークリップス』や『スイングバード』です。機能的に優れていて、キャラクター性が強すぎず、でもデザインに楽しさがある。いずれもロングセラーですが、色んなものを作った結果としてこれが残っているだけで、…失敗だらけの歴史です(笑)。
でも、失敗をたくさんしてきたことが、他社とどう差別化するかとか、どう機能を実現させるかとか、戦略的に開発する癖につながっていると思います。
当時の中国では、金型や成型・細かい作業を得意とする工場が多かったので、塗装の細かいクリップやマグネットを発売しました。同時に、デザインフィルでは長く愛される定番品の開発を目指していて…。その成功例が『ディークリップス』や『スイングバード』です。機能的に優れていて、キャラクター性が強すぎず、でもデザインに楽しさがある。いずれもロングセラーですが、色んなものを作った結果としてこれが残っているだけで、…失敗だらけの歴史です(笑)。
でも、失敗をたくさんしてきたことが、他社とどう差別化するかとか、どう機能を実現させるかとか、戦略的に開発する癖につながっていると思います。
━━━『ディークリップス』は別製品でも長年人気の製品です。
実は、OEM提案も考えながら開発した製品でした。別製品に向いたプロダクトとはどうあるべきか?と考えたとき、比較的簡単に、企業やキャラクターのオリジナリティが出せるものと考えて、開発したのが『ディークリップス』です。型代をかけずにOEMができる。そのポイントは今でも『エッチングクリップス』など、いくつかの製品に受け継がれているけれどね。
━━━『ディークリップス』は別製品でも長年人気の製品です。
実は、OEM提案も考えながら開発した製品でした。別製品に向いたプロダクトとはどうあるべきか?と考えたとき、比較的簡単に、企業やキャラクターのオリジナリティが出せるものと考えて、開発したのが『ディークリップス』です。型代をかけずにOEMができる。そのポイントは今でも『エッチングクリップス』など、いくつかの製品に受け継がれているけれどね。
アイデアはとにかく書いて残す。時を待つ、ブレンドさせる
━━━商品開発のアイデアは、出そうと思って出すというより、常に考えているんですか?
そう!ずーっと考えていて、思ったことは全部メモしてストックしておくんです。で、あるとき人と話していると、全然違う角度で意見が入ってきて発展していく。アイデアって、一人で考えているとつまるんですよ。
ベースの考えは大事なんだけど、「実現できないかも」「お金がかかりすぎるかも」など、障壁がある。人が入ってくると熟成するし、障壁がなくなったり、超える方法が見つかるときがあるんです。
アイデアを出すときは、とにかく書いて残すことをおすすめします。書いていくときには、障壁を考えない方がいい。全てのことにアイデアってあると思うので。
━━━商品開発のアイデアは、出そうと思って出すというより、常に考えているんですか?
そう!ずーっと考えていて、思ったことは全部メモしてストックしておくんです。で、あるとき人と話していると、全然違う角度で意見が入ってきて発展していく。アイデアって、一人で考えているとつまるんですよ。
ベースの考えは大事なんだけど、「実現できないかも」「お金がかかりすぎるかも」など、障壁がある。人が入ってくると熟成するし、障壁がなくなったり、超える方法が見つかるときがあるんです。
アイデアを出すときは、とにかく書いて残すことをおすすめします。書いていくときには、障壁を考えない方がいい。全てのことにアイデアってあると思うので。
━━━一度寝かせることも大事なんですね。出会いや、技術革新や、時が来ることがある。
そうそう。熟成させるのと、ブレンドさせるんです。あとは展示会にいったら結びついたり。
僕の場合のアイデア出しは…仕事と生活をきっちり分けていないですね。買い物ひとつとっても、「どうしたら安くできるのかな」とか、「どうしたら新しい素材とめぐり合えるかな」とか…いつもそんなことばっかり考えてる。
━━━その意欲はどこから湧いてくるんでしょう?
好奇心ですね。…そういうことをしていないと僕自身の価値がない感じがする!
━━━一度寝かせることも大事なんですね。出会いや、技術革新や、時が来ることがある。
そうそう。熟成させるのと、ブレンドさせるんです。あとは展示会にいったら結びついたり。
僕の場合のアイデア出しは…仕事と生活をきっちり分けていないですね。買い物ひとつとっても、「どうしたら安くできるのかな」とか、「どうしたら新しい素材とめぐり合えるかな」とか…いつもそんなことばっかり考えてる。
━━━その意欲はどこから湧いてくるんでしょう?
好奇心ですね。…そういうことをしていないと僕自身の価値がない感じがする!
製品開発とは問題解決である
あとは、僕にとって製品開発は、問題解決ですね。例えば『クイックテープカッター』。僕はマスキングテープなんて使わないんですけど、「テープを一定間隔で出して切りたい」というのは、誰にでもある当たり前の感覚だと思って開発したんです。マスキングテープも、絶対一定のピッチできれいに切りたいニーズはあるはずだと思いました。
あとは、僕にとって製品開発は、問題解決ですね。例えば『クイックテープカッター』。僕はマスキングテープなんて使わないんですけど、「テープを一定間隔で出して切りたい」というのは、誰にでもある当たり前の感覚だと思って開発したんです。マスキングテープも、絶対一定のピッチできれいに切りたいニーズはあるはずだと思いました。
━━━誰しもが思うであろう悩みというか。
そうそう。できるだけ、大多数の人が思う「こうだったらいいのに」を解決する開発、そのためのアイデアのストックを目指しているかな。
アイデアを着想したり、実現するために展示会にもよく行くし、工場も回ります。文具以外のものに使われていて、転用できる技術が見つかったりすることがあるんです。工場に行くのは大事ですよ。
━━━誰しもが思うであろう悩みというか。
そうそう。できるだけ、大多数の人が思う「こうだったらいいのに」を解決する開発、そのためのアイデアのストックを目指しているかな。
アイデアを着想したり、実現するために展示会にもよく行くし、工場も回ります。文具以外のものに使われていて、転用できる技術が見つかったりすることがあるんです。工場に行くのは大事ですよ。
商品開発アイデアの出し方まとめ
☑ とにかく書いて残す
☑ まずは障壁を考えずに、アイデア出し
☑ 人と話すとアイデアはふくらむ
☑ 工場や展示会などで知識を増やす
商品開発アイデアの出し方まとめ
☑ とにかく書いて残す
☑ まずは障壁を考えずに、アイデア出し
☑ 人と話すとアイデアはふくらむ
☑ 工場や展示会などで知識を増やす
売れる=喜んでいる人が多いということ。それがものすごく嬉しい
━━━ものづくりしていて楽しいのはどういうときですか?
やっぱり売れると、すごく嬉しいんですよ。売れないとすごく辛いんですが…この仕事は気持ちの振れ幅がすごく大きい感じがします。
━━━売れるということは、喜んでくれた人がそれだけいる、っていうことですよね。
そうですそうです!僕は失敗をたくさんして、売れないものも作ってきました。売れないものを作ると、すごく傷つくんですよ。その経験の積み重ねで、喜ばれるものは何か、マーケットの声はどうか、いつも戦略を考えては改善して製品開発に活かしています。
━━━ものづくりしていて楽しいのはどういうときですか?
やっぱり売れると、すごく嬉しいんですよ。売れないとすごく辛いんですが…この仕事は気持ちの振れ幅がすごく大きい感じがします。
━━━売れるということは、喜んでくれた人がそれだけいる、っていうことですよね。
そうですそうです!僕は失敗をたくさんして、売れないものも作ってきました。売れないものを作ると、すごく傷つくんですよ。その経験の積み重ねで、喜ばれるものは何か、マーケットの声はどうか、いつも戦略を考えては改善して製品開発に活かしています。